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就業規則の基本条文を、労働基準法・民法等の関連法律条文とともに各条毎に詳細解説!これを読めば就業規則がまるっと分かります。
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[人事第10条(労働条件の明示)

条文例



第10条 従業員の採用に際しては、書面により労働契約を締結するものとする。
2 労働契約の締結に際しては、以下の各号に示す規則並びに規程を交付し、労働条件を明示する。
 (1)就業規則
 (2)賃金規程、賞与規程、退職金規程
 (3)育児介護休業規程
 (4)その他就業規則より派生する規程
3 労働条件の締結に際しては、労働条件の中で個別に定めることが必要な以下の各号の事項については、書面を交付することにより明示する。
(1)契約期間(契約期間の定めの有無を含む)
 (2)採用時における就業の場所並びに採用後における就業の場所の変更の有無
 (3)採用時における当社内上の身分、役職、職位並びに賃金
 (4)所定労働時間を超える労働の有無
 (5)労働保険、社会保険の適用の有無
 (6)就業規則その他の規程と相違する労働条件を個別に定める場合には、当該労働条件
4 前項第6号の個別労働条件を定める場合においては、労働基準法並びに就業規則その他の規程の基準に達していなければならない。


解説


 第10条では、採用にあたっての労働契約の締結方法並びに労働条件の明示について定めています。

 労働基準法には、労働契約の締結の”方法”に関する定めはありません。このため、労働契約の締結については、労働基準法の一般法である民法の定めが適用されます。

 民法には、第3篇第2章第8節に「雇用」に関する定めがあります。このうち、労働契約の締結(成立)については、第623条「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」と定められているのみです。すなわち、書面、口頭、電磁的手段、その他いかなる方法であっても「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」ことが確認できれば、労働契約は成立いたします。

 上記の例では、第1項で「労働契約の締結は書面にて行う」としています。これは、現在の社会情勢に鑑み、後の不要なトラブルを避けるために、書面として確実に契約の証跡を残すことを意図しています。
 
 一方、労働基準法では、第15条にて、労働契約締結時における「労働条件の通知」を義務付けています。これは、労働条件に対する認識や相違による紛争・トラブルを未然に防ぐために、労働契約を締結する際に主要な労働条件を労働者側に明示することを求めているものです。

 労働契約締結時に明示しなければならない労働条件は、労働基準法施行規則によって以下のように定められています。

一   労働契約の期間に関する事項
一の二 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二   始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、
    休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて
    就業させる場合における就業時転換に関する事項
三   賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下
    この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、
    賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四   退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の
    決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期
    に関する事項
五   臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び
    第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六   労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する
    事項
七   安全及び衛生に関する事項
八   職業訓練に関する事項
九   災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十   表彰及び制裁に関する事項
十一  休職に関する事項


 このうち、第一号から第四号に定める事項については、必ず「書面の交付」によって明示しなければならないとされています。但し、これらの明示事項は就業規則の定めと重複する部分も多く含まれていますので、就業規則上の該当条文を示すことでも差し支えないとされています。ただし、個別の労働条件に関する「契約期間、就業の場所及び従事すべき業務、所定労働時間を超える労働の有無、採用時の賃金」については、書面交付によって明示することが必要です。 なお、労働基準法では、これらの明示された労働条件と事実が相違する場合には、労働者は「即時に労働契約を解除することができる」としています。

 この例では、第2項にて、一般的な労働条件については就業規則及び関連規程の配布によって明示することを定めています。就業規則は、労働者へ周知させなければなりませんが、その方法は事業場への掲示や備え付けでもよく、書面の交付まで義務付けているものではありません(法106条)。今回の例は、労働条件の書面通知義務と就業規則の周知義務の双方を同時に満たすために、就業規則等の交付を行うように定めています。

 また、第3項では、個別具体的な労働条件として書面によって明示する事項を定めています。この中で、第2号にある「採用後における就業の場所の変更の有無」については、予め書面で明示することによって、将来の転勤命令等の発令に当ってのトラブルを避けることを目的としています。会社の状況によって、在籍出向命令の発令の可能性がある場合には、同様に明示することが望ましいと思われます。

 最後の第4項は、就業規則と相違する労働条件を設定する場合の基準を明確化したものです。個別の労働条件の設定の際には、法令はもちろんのこと、就業規則の定める基準に達しない労働条件を設定することはできません。この場合には、該当部分のみが無効とされ、法令や就業規則の定める条件に従うことになります。

他の参考例



第10条 従業員の採用に際しては、労働条件通知書の交付を持って労働契約を締結したものとする。
2 労働条件通知書には、次の各号に示す事項を記載するものとする。
(1)契約期間(契約期間の定めの有無を含む)
 (2)採用時における就業の場所並びに採用後における就業の場所の変更の有無
 (3)採用時における当社内上の身分、役職、職位並びに賃金
 (4)所定労働時間を超える労働の有無
 (5)労働保険、社会保険の適用の有無
 (6)就業規則その他関連規程のうち、労働条件に関する条項
 (7)就業規則その他の規程と相違する労働条件を個別に定める場合には、当該労働条件
3 前項第7号の個別労働条件を定める場合においては、労働基準法並びに就業規則その他の規程の基準に達していなければならない。


検討のポイント



  1. まず、労働契約の締結をどのような手段で行うか(書面、口頭、電子メール、ホームページ等)を検討します。

  2. 労働条件のうち、当社において従業員一人一人に定める労働条件を確認し、これらをいつどのような方法で通知するかを検討します。この場合、少なくとも、以下の事項については「書面の交付による通知」が必要です。

    • 契約期間

    • 就業の場所及び従事すべき業務

    • 所定労働時間を超える労働の有無

    • 採用時の賃金


  3. 就業規則等を従業員全員に配布するかどうかを検討します。この際、「従業員に配布しない」と決めた場合には、少なくとも以下の事項については、就業規則の該当条項を示すか、具体的な内容を記載することが求められます。


    • 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

    • 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

    • 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)


  4. 「従業員に配布しない」と決めた場合には、どのような方法で従業員へ周知させるか(事業場へ掲示・備え付けする、社内LANやイントラネット上で閲覧できる状態にする等)を検討します。



関連法令(民法)



−第623条(雇用)
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる


関連法令(労働基準法)


−第13条(この法律違反の契約)

この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

−第15条(労働条件の明示)

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

−第92条(法令及び労働協約との関係)

就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
2 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。

−第106条(法令等の周知義務)

使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第18条第2項、第24条第1項ただし書、第32条の2第1項、第32条の3、第32条の4第1項、第32条の5第1項、第34条第2項ただし書、第36条第1項、第38条の2第2項、第38条の3第1項並びに第39条第5項及び第6項ただし書に規定する協定並びに第38条の4第1項及び第5項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。
2 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。


関連法令(労働基準法施行規則)


−第5条(明示すべき労働条件) 

使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項
2 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項は、前項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。
3 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。

−第52条の2(法106条関連・・・法令等の周知方法)

法第百六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
二 書面を労働者に交付すること。
三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
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