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就業規則の基本条文を、労働基準法・民法等の関連法律条文とともに各条毎に詳細解説!これを読めば就業規則がまるっと分かります。
条文例
解説第13条では、転籍について定めています。 ”転籍”とは、自社との労働契約関係をいったん終了させて、別の会社との間に新たな労働契約関係を成立させる一連の従業員の身分移動をいいます。この場合、「現在の労働契約関係を終了」と「新たな労働契約関係の発生」を同時に行われることとなります。このため、転籍を行う場合には、原則として「労働者の個別の同意」が必要とされています。(関連:民法625条) 転籍は、これまでの労働条件(従事業務の内容、勤務地、勤務時間、休日休暇、賃金、退職金等)が変化することがほとんどです。このため、会社の都合によって一方的に従業員に転籍を命じることについては、極めてトラブルの原因となりやすい状況を発生させます。従って、転籍を命じる可能性がある場合には、転籍の対象となる先やその際の同意取得手続きなどについて、就業規則で明示することが望ましいでしょう。この例では、まず、第1項にて「転籍先の範囲(完全子会社のみ)」と「対象範囲(個別同意を得た社員に限る)」ことを示しています。そして、第2項と第3項にて、転籍の際の条件提示と個別同意の手続きを示しています。 なお、転籍の際に問題となるのが「これまでの退職金の取扱い」です。転籍の方法には「従業員の個別同意を前提とした、転籍元と転籍先の間における使用者としての地位(債権債務)の包括的譲渡」と、「転籍元での合意解除と転籍先での新規雇用」の2種類があります。前者の場合(債権債務の包括的譲渡)には、これまでの退職債務を確定させた上で転籍先に譲渡することとなります。一方の後者の場合には、転籍元では退職扱いとなりますので、実際に退職金を支給することとなります。この例では、後者を採用して、退職金を支給しています。 転籍は、従業員に対しては「重大な身分関係の異動」という大きな決断を迫ることになります。このため、転籍を求める従業員に対しては、会社が転籍を求める理由を明示した上で、「転籍を受諾しなかった場合の状況」と「転籍を受託した場合の状況(転籍先での期待)」をはっきりと伝え、従業員に明確な複数の選択肢を求めることが必要です。特に、業績悪化に伴うリストラ等のために転籍を求める場合には、他の選択肢が本当に無いのかどうかを考えた上で、経営者として最善と信じることができる決断を行って頂きたいと存じます。 また、会社分割に伴う分割会社への転籍については、「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)」により、一定の手続きを行うことにより、従業員の個別同意が無くても労働契約を承継させることが可能です。この例では第1項但し書きにて、これに対応しています。 検討のポイント
関連法令(民法)−第625条(使用者の権利の譲渡の制限等)
関連法令(労働基準法)−第10条(定義)
*関連法令(労働契約承継法) −第1条(目的)
−第2条(労働者等への通知)
−第3条(営業に主として従事する労働者に係る労働契約の承継)
関連通達(労働基準法解釈例規)−昭和61.6.6 基発333号
条文例
解説第12条では、出向について定めています。 ”出向”とは、出向元とは何らかの労働関係を保ちながら、出向先との間において新たな労働契約関係に基づき相当期間継続的に勤務する形態を指します。このうち、出向元との労働契約関係を維持したまま行う出向を「在籍型出向(在籍出向)」と、出向元との労働契約関係を終了させて出向を「移籍型出向(転籍出向)」といいます。(昭61.6.6基発333号)本条ではこのうちの「在籍出向」についての取扱いを定めています。(以下、本条の解説では、在籍出向を単に「出向」といいます。) 第11条の配置転換・転勤など人事異動と異なり、従業員への出向命令は「出向先との間において新たな労働契約関係を生じさせる」という法律上の効力を持ちます。このため、民法625条第1項との関係から、出向命令を行う場合には、労働者の承諾(同意)が必要とされ、通常の人事異動の手続きより厳重な手続きが必要となります。 在籍出向に対する労働者の同意については、原則として就業規則や労働協約上へ明記することによる「包括的同意」で足りるとされています。これは、「出向中も出向元との労働契約関係が継続している」「労働条件に大きな変動を及ぼさない」「出向終了時には出向元の業務に復する」ということが前提となっているためです。すなわち、これらの条件のいずれかが満たされない場合(転籍、労働条件の終了、いわゆる「片道切符」の出向)の場合には、労働者個別の同意が必要とされています。 ここで注意しなければならないのが、「包括的同意」が認められるかどうかの判断です。最近の判例では、単に就業規則上で「出向を命ずることがある」と定めているのみでは、出向に関して「包括的同意」が行われているとはいえないという判例が多く、出向義務、出向先の範囲、出向中の労働条件、出向期間等を具体的に定めることが必要とされています。このため、従業員に出向を命ずる可能性がある場合には、就業規則上や社内規定でこれらのことを明らかにすることが必要です。 この例では、まず、第1項と第2項にて「出向先の範囲」と「出向期間」を明らかにしています。第1項では、出向先として完全子会社(出資比率が100%である子会社)を挙げています。完全子会社の場合には、親会社の完全な経営支配が及んでおり、実態として「社内の一部門」と同等の取扱いをされるケースが大変多く見られます。この例では、完全子会社を「社内の一部門」と同等に捉えていることを前提として、第11条に定める社内の人事異動と同様の定めを行っています。 一方、第2項では、完全子会社以外の会社・団体への出向について定めています。完全子会社以外の会社・団体については(1)子会社、(2)関連会社、(3)子会社・関連会社でないが、業務上のつながりが深い会社(下請、業務提携先等)、(4)加盟する業界団体 等に対して出向が行われる場合が多く見られますが、これらの場合には、勤務形態や労働条件などが幾分異なることが予想され、「社内の一部門への異動」と同等に捉えることは難しいと考えられます。また、出向の目的も出向先の業務への支援を前提としていることが多いものと予想されます。この例では、出向の目的を「出向先の業務への支援」を前提とし、出向の期限を「3年」としています。なお、ここでは出向終了後には出向元である当社へ復帰することを前提としています。 そして、第3項にて「社員(≠従業員)」に対して出向義務を課すこと、第4項にて出向中の労働条件の定めについて明らかにしています。また、出向期間中は密接に関連した複数の労働契約関係が同時に成立することになりますので、その間の就業規則の適用や法律上の義務責任の所在を整理することが求められます。この例では、第5項にてその手続きを定めています。 なお、出向と同様の労働関係にあるものとして「派遣」があります。派遣においても、派遣労働者の労働契約関係は派遣元と、指揮命令関係は派遣先と結ばれていますが、派遣の場合には、「派遣元が労働者の派遣行為そのものを業として行う(=労働者派遣を収益の目的として、派遣元と派遣先の間で労働者派遣契約を締結する)」点において、出向と異なります。出向の場合にも、出向者の人件費相当額を出向先から出向元へ支払う場合が多くありますが、これはあくまでも「出向者への給与を負担する」ということであり、出向者の人件費相当額以上の支払いを行うことは予定されていません。人件費以上の支払いを行ってしまうと、常用型労働者派遣を行っていると解釈されたり、税法上の不利益を被る可能性があるため注意が必要です。 出向の取扱いについては、労働トラブルになるケースが多いポイントです。その多くが、「出向の可能性があることを従業員が予想していない/予想していた出向内容と違う」ことに起因しています。無用な労働トラブルを避けるためには、出向の有無や条件はもちろん、出向の目的・業務上の必要性のなどを従業員に理解させることが必要です。「論理的にきちんと説明できるだけの意思と判断基準を持つこと」がトラブル回避の第一歩となります。 検討のポイント
関連法令(民法)
関連法令(労働基準法)
関連通達(労働基準法解釈例規)
条文例
解説第11条では、人事異動について定めています。 従業員の採用後に、従事する業務の変更を命ずることは原則として可能です。但し、会社の一方的な意思表示(命令)によって担当業務の変更を行うことは、従業員の意に沿わない場合などには争いを生ずるケースがあります。このため、「必要に応じて担当業務の変更を行う」旨の定めを就業規則に明記することにより、このようなトラブルに対する抑止を行うことができます。 また、業務上の必要により、就業場所の変更を命ずることについても原則として可能です。但し、この場合「転居を伴うか否か」によって従業員にかかる負担が大きく異なることから、業務変更よりもトラブルとなるケースが多く見受けられます。このため、就業場所の変更の有無はもちろんのこと、会社の状況に応じて、転勤地の範囲(転居を伴うかどうか)についても言及をすることが望ましいといえます。 なお、業務変更や就業場所変更については、全ての社員を均一に扱うことまでは求められていません。このため、社員の就業形態を複数のコースに分けて取り扱う「コース別人事制度」や、採用時に職種を限定する「職種別採用制度」を取り入れる企業も増加しています。ただし、これらの制度を取り入れる場合、現在在籍しているの従業員の取扱いや実質的な男女差別とならないような配慮を行う必要があります。 上記の例は、(1)業務の変更は、パートタイマー・アルバイト等を含めた従業員全体に対して行われる、(2)就業場所の変更は、社員のみに行われ、かつ、採用時に転勤の有無や範囲について社員と取り決めを行う、ことを想定しています。実際の運用の際には社員を「全国型社員」と「地域型社員」にわけ、それぞれの社員毎にどのような活躍を求めるかを明確にした上で、処遇上の取扱いを定めることになります。 他の参考例
検討のポイント
条文例
解説第10条では、採用にあたっての労働契約の締結方法並びに労働条件の明示について定めています。 労働基準法には、労働契約の締結の”方法”に関する定めはありません。このため、労働契約の締結については、労働基準法の一般法である民法の定めが適用されます。 民法には、第3篇第2章第8節に「雇用」に関する定めがあります。このうち、労働契約の締結(成立)については、第623条「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」と定められているのみです。すなわち、書面、口頭、電磁的手段、その他いかなる方法であっても「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」ことが確認できれば、労働契約は成立いたします。 上記の例では、第1項で「労働契約の締結は書面にて行う」としています。これは、現在の社会情勢に鑑み、後の不要なトラブルを避けるために、書面として確実に契約の証跡を残すことを意図しています。 一方、労働基準法では、第15条にて、労働契約締結時における「労働条件の通知」を義務付けています。これは、労働条件に対する認識や相違による紛争・トラブルを未然に防ぐために、労働契約を締結する際に主要な労働条件を労働者側に明示することを求めているものです。 労働契約締結時に明示しなければならない労働条件は、労働基準法施行規則によって以下のように定められています。
このうち、第一号から第四号に定める事項については、必ず「書面の交付」によって明示しなければならないとされています。但し、これらの明示事項は就業規則の定めと重複する部分も多く含まれていますので、就業規則上の該当条文を示すことでも差し支えないとされています。ただし、個別の労働条件に関する「契約期間、就業の場所及び従事すべき業務、所定労働時間を超える労働の有無、採用時の賃金」については、書面交付によって明示することが必要です。 なお、労働基準法では、これらの明示された労働条件と事実が相違する場合には、労働者は「即時に労働契約を解除することができる」としています。 この例では、第2項にて、一般的な労働条件については就業規則及び関連規程の配布によって明示することを定めています。就業規則は、労働者へ周知させなければなりませんが、その方法は事業場への掲示や備え付けでもよく、書面の交付まで義務付けているものではありません(法106条)。今回の例は、労働条件の書面通知義務と就業規則の周知義務の双方を同時に満たすために、就業規則等の交付を行うように定めています。 また、第3項では、個別具体的な労働条件として書面によって明示する事項を定めています。この中で、第2号にある「採用後における就業の場所の変更の有無」については、予め書面で明示することによって、将来の転勤命令等の発令に当ってのトラブルを避けることを目的としています。会社の状況によって、在籍出向命令の発令の可能性がある場合には、同様に明示することが望ましいと思われます。 最後の第4項は、就業規則と相違する労働条件を設定する場合の基準を明確化したものです。個別の労働条件の設定の際には、法令はもちろんのこと、就業規則の定める基準に達しない労働条件を設定することはできません。この場合には、該当部分のみが無効とされ、法令や就業規則の定める条件に従うことになります。 他の参考例
検討のポイント
関連法令(民法)
関連法令(労働基準法)−第13条(この法律違反の契約)
−第15条(労働条件の明示)
−第92条(法令及び労働協約との関係)
−第106条(法令等の周知義務)
関連法令(労働基準法施行規則)−第5条(明示すべき労働条件)
−第52条の2(法106条関連・・・法令等の周知方法)
条文例
解説第9条では、トライアル雇用について定めています。トライアル雇用とは、業務遂行に当たっての適性や能力などを見極めることを目的として、本採用の前に短期間の有期雇用契約を締結して試行的に行う雇用のことです。 第8条の「試用期間」は、あくまでも一つの(期限を定めない)労働契約の最初の段階に設けられるものであり、試用期間中とその後の期間は一つの労働契約となります。従って、会社側はもちろんのこと、労働者側からであっても、試用期間終了時点で契約を解除したい場合においては、法に制限された範囲で一定の手続き(解雇や退職)を行わなければなりません。 一方、「トライアル雇用制度」では、3ヶ月程度の有期労働契約を締結します。すなわち、トライアル雇用制度では、当初のトライアル雇用は3ヶ月経過時点でいったん終了し、その時点で、引き続き本採用を行うことを会社側・労働者側が共に希望する場合に、改めて通常の(期限を定めない)労働契約を締結することになります。すなわち、トライアル雇用制度が終了時点において、本採用となるかどうかは、会社側にも労働者側にも選択権があることになります。この点において、トライアル雇用制度は、通常の試用期間制度より双方の拘束力が弱い(=選択の自由度が高い)制度といえます。 トライアル雇用制度を設けるか否かは会社の自由であり、必ずしも設けなければならないものではありません。ただし、トライアル雇用制度を設けて実際にトライアル雇用を実施すると、雇用関係の助成金の一つである「試行雇用(トライアル雇用)奨励金」が受給できる可能性があります。この助成金を受給することができる条件の概要は以下の通りです。
試行雇用奨励金が受給可能なトライアル雇用の期間は原則3ヶ月とされていますので、トライアル雇用制度を設ける場合には、この点にも注意が必要となります。(なお、雇用の目的に関わらず、有期雇用契約を締結する場合には、その期間が3年(一定の場合には5年)を超えることはできません(労働基準法第14条)) トライアル雇用制度は、比較的新しい考え方の制度であり、運用形態も様々です。制度を設ける際には、自社の実態に即して十分に検討を行うことが求められます。 検討のポイント
関連法令(労働基準法)−第14条(契約期間等)
参考「人を雇い入れる事業主の方へ」(厚生労働省ホームページ) http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/c-top.html
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